東京高等裁判所 平成5年(う)1225号 判決
被告人 石掛正冨
〔抄 録〕
論旨は、要するに、当庁平成五年押第四二七号の一三の自動式けん銃一丁(以下「本件自動式けん銃」という。)は、撃針が折損していて金属性弾丸発射の機能を有しておらず、かつ、右は通常の手入れ又は修理によりその機能を回復する程度の故障ではないと認められるから、原判決が罪となるべき事実第二においてこれを銃砲刀剣類所持等取締法(平成五年法律第六六号による改正前のもの。以下同じ。)三条一項にいう銃砲(けん銃)であると認定したのは、事実を誤認したものであり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである、というのである。
なるほど、千葉県警察本部刑事部科学捜査研究所技術吏員島村克巳作成の平成五年六月四日付鑑定書によれば、本件自動式けん銃は、その撃針の先端部分が折損し、現状のままでは弾丸を発射する機能を有しないことが明らかであるが、撃発機関部が正常に作動することから、撃針を正常なものに交換すれば同機能が回復するものであり、そのためには、旋盤、やすり等を使用して鉄棒を加工することにより撃針を新たに作製することが可能であるのみならず、現状の撃針の折損部分に他の金属を溶接することによっても撃針としての機能を回復させうることが認められる。また、同鑑定書の記載からも明らかなように、右加工や溶接につき特殊な技術や設備を要するものではないと考えられ、結局、本件自動式けん銃は、通常の修理により弾丸発射機能を回復する程度の故障を有するに過ぎないと認められるから、銃砲刀剣類所持等取締法三条一項にいう銃砲(けん銃)であることを優に是認することができる(最高裁判所昭和四四年七月一一日第二小法廷判決・刑集二三巻八号一〇五二頁参照)。所論引用の福岡高等裁判所昭和四三年三月二日判決・下刑集一〇巻三号二二一頁は事案を異にし、本件に適切ではない。
(半谷 濱井 林)